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京都新聞 2019年2月9日 P10 美術
雪景色に見いだす 東洋的精神美
シーズン・ラオ展


マカオ出身の写真家、シーズン・ラオ。彼の新作個展が開催されている。

ラオはマカオ理工大に在学中からデザイナーとして活動を始め、有名ブランドを含む数々のプロジェクトを担当した。また、地元の歴史的建造物を捉えた写真作品が話題となり、古い街並みの取り壊しが中止になるなど、写真家としても実績を残している。

彼は8年前に北海道の静寂な雪景色に出会い、この新しいモチーフに心酔、23歳の時に同地に移住した。以後、北海道や東北など本の雪景色を中心とする写真作品を発表し、国内外で高い評価を獲得している。

本展の作品は、雪景色の山並みや樹木、湖面などを、生成りの和紙にインクジェットで出力したものだ。雪や氷の部分は余白で表される一方、木々が織りなす淡い黒のグラデーションは、まるで水墨画のように繊細である。

作品のディテールを凝視すると、木々の連なりが筆でさっと引いた線のように見える部分があり、コントラストの調整に独自の技術があるのではないかと感じた。また、一部の作品にみられる鳥瞰の風景も、どのように撮影しているのか興味をそそられる。

ラオは東洋美術の精神性にも通じる日本の雪景色に、心の原風景を見いだしている。そして諸外国で展示を重ねるうちに、そうした感情がグローバルに共有可能なものだということも発見した。彼と日本の雪景色の関係は、今後も途切れず続いていくだろう。

(白川=下河原上弁天町 24日まで 月休)
(小吹隆文・美術ライター)